第2回インタビュー 子育ての伴走者 養育者が子育てしやすいように多角的にサポートする専門家集団〜かるがも藤沢クリニック
ママだけでなく家族や周りの人たちにも一緒にこの記事を読んでもらうことで、子どもを育てることをみんなで協力できるようになると思います。
(この記事は3分で読めます)
[インタビュー内容]
1.子育てに関する活動での団体または個人におけるMissonは何ですか。
2.身の回りの子育て(0歳~10歳くらいまで)に関して気になっていることは、どのようなことですか。
3.耳に多く入ってくる子育て中の悩みは何ですか。
4.男性にどのように育児に協力してもらえば女性の負担が減ると考えますか。
5.どのような社会になれば出産や子育てに積極的になれると思いますか。
江田 明日香さん
かるがも藤沢クリニック 院長
小児科専門医 国際認定ラクテーション・コンサルタント
2004年 杏林大学卒業 藤沢市民病院にて臨床研修
2006年~藤沢市民病院 小児科勤務
2008年~聖隷横浜病院 小児科勤務
2010年~上大岡こどもクリニック・茅ヶ崎こどもの森クリニック等に勤務
質問1 子育てに関する活動での団体または個人におけるMissonは何ですか。
江田さん
―「子育てについて今できることを前向きに考えていくこと」
子どもたちは小学生になりましたが、家のマネジメントはどちらかというと私がやっていました。しかし、現在では夫も子育てを考え職場を選んでくれて、私ができないと言うと協力してくれるようになりました。
子どもが小さい時には、生物学的に女性が担わなければならない育児の役割はどうにもならないことです。
お産は女性にしかできないことですし、生き物としての役割があります。それに対して気持ちが伴わないことがあります。
男女平等に教育を受けて仕事をしてくると、生物学的にどうしても女性にしかできないことに対して気持ちが伴わない人が発生してきます。
そして多くのお母さんはそのギャップに悩んでいるのではないかと考えています。
私もそうでした。
バリバリ仕事をやっていたのだけれど辞めざるを得なくて、復職にも色々悩んで、自分が働きやすい環境を作るしかなくて、クリニックを立ち上げました。
子どもが幼稚園の時にクリニックを始めました。子どもが病気の時に一人では仕事ができないのでワークシェアが必要になり、同じようにフルで預けて働けないけどちょっとだけなら働きたい医師周りにいて、そういう人たちで力を合わせてできることは何かを考えた結果、現在のクリニックの形になりました。
母親を離れて限られた時間と自分のキャパシティの中で、女性男性ではなく自分にできることは何か自分の役割は何かを考えることによって次の行動が変わってくると思います。
子育てが辛い、育児の悩みが深いというのは、やらなきゃいけない役割に社会と気持ちが伴わない社会構造になっている。このギャップにみんなハマってしまう。
私もハマりました。
そこを受け入れて今は育児を中心にしているけれど、もっと働きたい、同期は昇り詰めているのにまだ自分はここにいるということもギャップの一つになっていました。
私は救いの一つとして、母親じゃない自分としてできることを考えたとき、できることが子育てしながら働ける環境を作ることでした。
このような環境がその当時は見つからず、自分で作るしかなく、ワークシェアできるクリニックを作りたいと話したら、周りに協力してくれる人がたくさんいました。
女性、男性ということは一旦置いて、人として自分が今できることは何か前向きに考えて行くことがすごく大切なことなのではないかと考えています。
子育てを優先することを選んでいくことに決めているけれど、結局両立して行くしかなく、自分で納得がいく役割が持てる場所を探してきたし、これからも探して行くと思います。
五十嵐
―お医者さんはキャリア思考が強いと思っていたので、子育てを優先していく時期があると考えていらっしゃって、私も同じ考えで嬉しかったです。私も同じ気持ちで団体を立ち上げましたから。
江田さん
―保育園の送り迎えを祖父母にお願いして当直もする医者もたくさんいます。
だけど私は違っていて、子どもを産んだのだからある程度子育てに関わっていきたいと思い、親に頼ってまで仕事をする事に対する疑問もありました。
置かれた状況で自分自身に納得がいかないとジレンマを抱えると思いますが、その時は自分の落とし所をどこに持って行くかということになると思うのですが、その落とし所が見つからないお母さんが多いのではないでしょうか。
それが子供と一緒の時間を多く過ごすことにあれば、そのお母さんにとって幸せなこととなりますよね。
五十嵐
―男女平等に教育を受けてきた中で出産育児をきっかけに役割が変わってくることに対して頭の切り替えが難しいですよね。
質問2 身の回りの子育て(0歳~10歳くらいまで)に関して気になっていることは、どのようなことですか。
江田さん
―気になっていることは、これからのクリニックでの支援とつながって行くのですが、子どものことを大人が知らなすぎるということです。
私自身も出産して初めて母乳をあげることについて何も知らないことに気がつきました。
その後たくさん勉強して、クリニックで助産師を配置するようにしました。
海外ではペアレンティングと言って親になるための子育てスキルが大事と言われていて、子どもの特性を知って、年齢ごとに適切に対応出来ると言うことをスキルとして学ぶことが行われています。
日本はほとんどそれが行き届いていないです。週末だけの数時間の母親学級で子どものことを知ることができるわけがないです。
五十嵐
―母親学級には仕事で参加できず、赤ちゃんが生まれてから突然泣いた時にオロオロしてしまいました。
江田さん
―多くの親御さんにとって、赤ちゃんとの出会いは火星人との出会いみたいにどう接したらいいのか分からないようです。この子がどう育っていくのか全然見通しが分からない。
とにかく子供っていうものを知ってもらって、同じ人間であり成長過程にあるということ、特性があるから年齢ごとにこういう対応が必要だということ、こういう関わりが必要だということを知ってほしいと思っています。
開催している親子クラスでは、子どもを知って下さいということを大きなテーマにしています。
社会全体に子どもと子育てを知ってほしいなと思います。
質問3 耳により多く入ってくる子育て中の悩みは何ですか。
江田さん
―こんな社会情勢なので子供同士の触れ合いが圧倒的に減りました。お母さんが出かけられる場所がないです。
ベビークラスに出かけられて直接話せる、オンラインじゃないことが新鮮で、とても嬉しかったという感想がありました。親同士、子供同士の対面の時間が減ってしまって今のお母さんたちにはキツイのではないでしょうか。
五十嵐
―当法人が主催している大船ハロウィンウォークのアンケートでコロナ禍での子育てについて質問をしたところ、「私の子どもがまだ赤ちゃんだったら、自殺したい気持ちになっていたかもしれない」そう言った回答がありました。
子供がどう育っていくかも分からず不安に思う人達は多いし、先輩ママ達もとても心配しているということもわかりました。
質問4 男性にどのように育児に協力してもらえば女性の負担が減ると考えますか。
江田さん
―最初にも話しましたが、それぞれが役割を考えてコミュニケーションをきちんととることが大切です。
女性が何か協力して貰うっていうふうに考えているという事は、まだ家事育児全部をしようと思っているということです。
「協力してもらう」とは、他の人に対して協力を仰ぐことじゃないですか、そうではなくて、父親は当事者です。だから、うちでは「手伝い」という言葉は禁句です。「あなたもやるべき」という教育を夫にしました。
夫に聞くと、洗濯物の山があってもそれにそれが目につかないのだそうです。それにまず目を向けましょうと教えて、段々目を向けられるようになりました。今では完全に役割分担をできるようになりました。
多分私達の子供世代が大人になった社会は、男とか女という生物学的な違いだけであって、誰が子育てするっていうことがフリーに議論されていく社会になっていくと思います。
そのころをイメージすると、女の人だけが子育てをするということは無くなって、男性が養子をもらって子育てするような社会となっています。
そうなると何の役割をしていくかパートナーと話し合って決めて行くようになっていくと思います。
五十嵐
―質問を考える上で女性が子育てするということばかり考えてしまいましたが、これからはジェンダーレスでパートナーとそれぞれの役割を考える社会になりそうですね
江田さん
ー私は41歳ですが私たちと、これから子供を産む世代の人たちが育ってきた環境や社会構造が全然違うと思います。40代の男性はもう育児はお母さんの役割っていう家庭で育っていることが一般的ですが、そこは変わっていくでしょうね。
質問5どのような社会になれば出産や子育てに積極的になれると思いますか。
江田さん
―いつでも子育ての当事者としての考えることを忘れない
大変な時期は一瞬なので、通り過ぎるとみんな忘れていってしまいます。子育てに関わる仕事をしている人は子育て真っ盛りの大変さを忘れてはいけないと思います。
理想は社会全体がそうなって行くことですが。
五十嵐
―お子さんを持たない方の協力も必要になってきますね。
江田さん
―直接子育てに関わらなくても、子育てを理解して行くということが一番簡単に関わっていける方法なので、「子育てしてくれている人もいて頑張ってくれてありがとう」くらいの気持ちで見守ってくれたら嬉しいですね。
【かるがも藤沢クリニック「母乳バンク」ご紹介】
低体重で生まれた赤ちゃんなどに母乳が与えられない母親に代わって、寄付された母乳を提供する「母乳バンク」。国内ではまだ認知度が低く、協力機関は十分とはいえない現状がある。藤沢の小児科、かるがも藤沢クリニックは県内唯一の登録施設として母乳バンクに協力している。
国内では、2013年に昭和大学に設立された母乳バンクを前身に、日本母乳バンク協会が母乳の検査、保管、管理などを実施。
かるがも藤沢クリニックでは、現在約20人が登録。2年ほど前から協会から紹介された登録希望者の健診と、搾乳などの支援を行ってきた。
(タウンニュース藤沢版2020年11月13日号より)